永久歯が生えない!?先天性欠如・萌出遅延・埋伏歯などの原因や治療法について徹底解説!

お子さんの永久歯が生えてこないと心配になりますよね。

永久歯が生えない原因は大きく分けて、永久歯が足りていないパターン(先天性欠如)と永久歯があるにも関わらず生えてこないパターン(萌出遅延・埋伏)に分けられます。

永久歯が生えてこない場合、早期に発見して準備するに越したことはありません。

今回は永久歯が生えてこない原因となる「先天性欠如」と「萌出遅延」と「埋伏」について解説します。

 

 

先天性欠如について

まずは永久歯が不足している先天性欠如とはどんなものか、またその原因について解説します。

 

先天性欠如とは?

生まれながらにして歯が足りない状態を「先天性欠如歯」と呼びます。

永久歯が顎の骨に中で「歯胚」という歯のもととなる細胞の集まりから育ち続けて動くと、その上にある乳歯の根っこが溶けて短くなり、やがて抜け落ちます。

これが通常の歯の生え変わりでみられる現象ですが、永久歯が存在しないと乳歯の根っこは吸収されないため、大人になっても永久歯が生えるべき場所に乳歯が残った状態になります。

2007~2008年に行われた日本小児歯科学会の全国調査によると、子供の10人に1人の割合で「永久歯の先天性欠如歯」であることがわかりました。

1クラスが30人だった場合は3人程度いる計算になりますので、なかなか高い頻度であると言えます。

また、特に側切歯(前から2番目の歯)と第二小臼歯(前から5番目の歯)の欠如が起こりやすいという結果がでています。

これらは学校で行われる歯科検診ですぐに判明するものではありません。

なぜなら、歯の生え変わりには個人差があるため判断しにくいこと、レントゲンを撮らないと顎の骨の中にある永久歯の状態が分からないことが挙げられます。

そのため、当院では永久歯がなかなか生えてこない場合、小学校2~3年生までに一度レントゲン撮影による確認をおすすめしております。

 

なぜ歯が足りない!?先天性欠如の原因について

遺伝や歯をつくる過程で栄養の欠如・薬の副作用・全身疾患・感染・外傷など様々な原因が考えられていますが、まだはっきりとした因果関係は分かっておりません。

また、柔らかい食事を摂るようになった現代人の顎は昔の方に比べ小さくなり、親知らずの本来あるべき本数も減少しています。

これと同じことが他の歯にも起こり、進化の過程として歯の本数が少なくなる傾向にあると考えられています。

 

どんな場合に永久歯の先天性欠如を疑う?


ここでは、永久歯の先天性欠如のリスクが高い方をご紹介します。

以下のことに該当する場合は、一度、歯科医院での相談を行うとよいでしょう。

早期に発見することで、計画的に治療や様子をみることができます。

 

親族に先天性欠如の方がいる


身長やお顔立ちと同じように、歯並びや歯の本数も影響を受けると言われています。

両親のどちらかが欠如している場合、要注意です。

 

乳歯が欠如または癒合歯

「癒合歯」とは隣同士の歯がくっついて一塊の状態で、乳歯の前歯に多くみられます。

特に➀~➂の場所に乳歯の癒合歯が起こりやすいと言われています。

➀下顎の乳側切歯と乳犬歯

➁下顎の乳中切歯と乳側切歯

➂上顎の乳中切歯と乳側切歯

※乳中切歯:前から1番目、乳側切歯:前から2番目、乳犬歯:前から3番目

乳歯が欠如や癒合歯の場合、下にある永久歯が欠如している可能性が高くなりますが、永久歯が存在する場合もありますのでしばらく様子をみてみましょう。

 

乳歯がいつまでも残っている、歯の生え変わりに明らかな左右差がある

歯の生え変わりはある程度バラツキがあるため、一概に何歳までに乳歯が抜けてないといけないというような明確な目安はありませんが、

明らかに乳歯が本来抜けるべき時期にもかかわらず、グラグラと動揺せずに残っている状態は疑ってみましょう。

また、反対側と比べて歯の生え変わりが明らかに遅れており半年以上たっても変化がない場合も要注意です。

 

先天性欠如による悪い影響

では、実際に先天性欠如をそのままにしていた場合に起こりうる影響についてご説明します。

永久歯がないことで、代わり残っていた乳歯も虫歯や寿命によって抜け落ちると、その分の隙間がぽっかりとできてしまいます。

その隙間をさらに放置していると他の歯が隙間に向かって動く傾向があるために、様々なトラブルを引き起こすことがあります。

 

すきっ歯(空隙歯列)

歯並び全体はスカスカの状態である「すきっ歯」となり、食べ物が歯と歯の間に詰まりやすくなることが考えられます。

 

正中のズレ


お顔の正中に対して理想的には上下の歯並びの正中が一致しているのが審美的に理想ですが、隙間のある方へ動いてしまうことでお顔と歯並びの正中に大きなズレが生じてしまいます。

隣の歯が傾く、かみ合う歯が伸びる


隣り合う歯が傾き始めたり、かみ合う歯が上に伸びてきて歯並び全体を悪くすることが予想されます。

 

先天性欠如の場合の治療法と治療のタイミング

先天性欠如であるにも関わらず、ずっと放置してしまうと上記のような歯並びへの影響がでてしまうことがご理解いただけましたでしょうか?

対処が遅くなってしまうと、悪くなってしまったところを治すために期間や費用も余計にかかってしまうため、先天性欠如の有無を早期発見し、計画的な治療を受けることが望ましいと言えます。

治療の方法として、ブリッジやインプラントなどの人工の歯で欠如した箇所を補う「補綴治療」による方法と、かみ合わせを治す「矯正治療」による方法のいずれか、または両方が必要となってきます。

ではそれぞれの、治療法についてみていきましょう。

 

補綴治療による治療法

補綴治療では両隣の歯を削って欠如部に人工歯を入れるブリッジや、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込むインプラントによる方法が考えられます。

デメリットとしてお口の中に人工物が入ってしまうこと、長持ちさせるために定期的なメンテナンスが必要であることが挙げられます。

 

矯正治療による治療法

矯正治療で歯を動かして欠如部の隙間を埋めることにより、将来的に人工物を入れずに済むことが可能になります。

顎の骨が健康で、歯が動きやすい若い年齢から行う方が有利であるといえます。

一方で、補綴治療と比べて期間がかかることがデメリットとしてあげられます。

また、補綴治療で最終的に欠如部を人工歯で補う際も、隣の歯が大きく倒れこんでいたり、噛み合う歯が伸びている場合には矯正治療で整える処置が必要になります。

※2012年度から6本以上の先天性欠如歯がある場合、「指定自立 支援医療機関(育成・更生医療)」の指定を受けている矯正歯科医院または病院での治療に限って、健康保険が適用されるようになりました。

 

先天性欠如の治療のタイミング


では、先天性欠如だった場合いつから治療を始めればいいのか気になるところですよね。

下に永久歯のない乳歯の寿命は個人差がありますが、20~30代、稀に40代や50代の方でも乳歯が残っていることがあります。

しかし、乳歯は永久歯と比べて根っこが短く、歯質自体が弱いために虫歯になりやすいことから、一生ずっと使い続けることは非常に難しいと考えていただいてよろしいでしょう。

治療のタイミングは2つに分けられ、
子どもの段階から矯正治療で計画的に乳歯を抜歯して欠損部を埋める場合と、成人後もなるべく乳歯を残してダメになってから補綴治療で治すという場合が考えられます。

なるべく乳歯を残すためには、毎日の歯ブラシやかかりつけ医でのメンテナンスが非常に重要になってきます。

このように治療を開始する年齢や患者さんの考え方によってタイミングや治療法が異なる場合があります。

早期に発見することで、これらの治療の選択の幅が広がります。

 

歯並びでお悩みの方、
お気軽に矯正相談へお越しください。

 

萌出遅延や埋伏歯について


次に、歯があるけど生えてこない萌出遅延や埋伏歯とはどんなものか、またその原因について解説します。

 

萌出遅延や埋伏歯とは?


何かしらの原因によって永久歯が生えてこれない環境であると、乳歯がしばらく抜けなかったり、乳歯が抜けても下にある永久歯が見えてこないことがあります。

乳歯から永久歯へと多くの歯が交換する混合歯列期(6~12歳前後)は、歯の生え変わりに異常が起こりやすい時期です。

平均的な歯の生え変わり時期より遅れて歯が生えてくる状態を「萌出遅延」と呼び、正常な歯の生え変わり時期を大幅に過ぎても、歯茎の外に歯が生えてこない歯を「埋伏歯」と呼びます。

この「萌出遅延」と「埋伏歯」の厳密な区別は難しいですが、どちらも永久歯が生えにくい状態になっており基本的に対処方法は同じです。

もし、歯の生え変わりに異常がある場合、その歯だけにとどまらず歯並び全体への影響が出てしまうため、早期に発見し、治療を行うことが非常に重要になってきます。

「萌出遅延」は上顎の中切歯(前から1番目)や犬歯(前から3番目)など、比較的目立ちやすいところに起こりやすいことがわかっています。

しかし、歯の生え変わりの早い子と遅い子では2年前後の差がありますので単純に歯の生え変わりが遅いだけなのか、それとも問題があるのかは

学校の歯科検診だけで正確に判断することは難しいといえます。

そのため、問題があると予想される場合には歯科医院でレントゲン撮影を行い、歯の位置・成長状態や反対側の歯との生え変わりの差を確認する必要があります。

当院では永久歯がなかなか生えてこない場合、小学校2~3年生までに一度レントゲン撮影による確認をおすすめしております。

 

なぜ歯が生えない!?萌出遅延や埋伏の原因について

萌出遅延や埋伏の原因は様々です。それぞれみていきましょう。

 

全身的な原因


鎖骨頭蓋骨異形成症、大理石病、クル病などの全身疾患によって、歯が生え変わりが行われにくい状態となります。

 

位置の異常


最も多くみられる永久歯が生えてこない原因です。

永久歯のもととなる「歯胚」の位置や方向に異常があることで、本来生えるべき方向に生えてこれず、生え変わりが遅れてしまったり埋もれたままの状態になります。

 

生える隙間が不足


永久歯が生える隙間が足りないことで、隣の歯に引っかかってしまい生えてこない場合や変な方向に生えてしまう原因になります。

 

厚い歯茎

永久歯が生えようとしているにも関わらず、固い・厚い歯肉に覆われることで外に出れない場合があります。

その場合には歯肉の切開または切除し、永久歯が生えやすい環境をつくる必要があります。

 

過剰歯や歯牙腫の存在

永久歯が生えようとする経路に余剰な歯があるために、永久歯が生えてくることを邪魔してしまいます。

口腔外科での抜歯や摘出が必要になります。

 

嚢胞(のうほう)の形成

嚢胞とは体の中に生じた病的な袋状のもので、顎の骨の中にできてしまうと永久歯の生え変わりを妨げたり生える向きを変えてしまう場合があります。

口腔外科での処置が必要になります。

 

乳歯の虫歯・外傷・早期喪失

永久歯が生えてくる際に、乳歯の根が溶けて短くなり、やがて抜け落ちるのが通常の歯の生え変わりでみられる現象です。

乳歯の外傷や虫歯によって神経が死んでしまうと乳歯の根の吸収が遅れてしまいます。

また、乳歯の根の周りに病巣ができてしまっても、生え変わりが遅れたり、病巣を避けるように永久歯が生えようとします。

早く乳歯が抜けてしまった場合、抜けた穴に骨ができて蓋をされてしまい歯の生え変わりが遅れてしまうことがあります。

 

歯の骨性癒着(アンキローシス)

歯と骨の境目が無くなり、くっついてしまうことで歯が動かない状態になります。

 

どんな場合に永久歯の萌出遅延や埋伏を疑う?


以下に該当する方は、永久歯の萌出遅延や埋伏の可能性がある方です。

一度、歯科医院で確認をしていただくとよいかもしれません。

 

乳歯がいつまでも残っている


歯の生え変わりはある程度バラツキがあるため、一概に何歳までに乳歯が抜けてないといけないというような明確な目安はありませんが、

明らかに乳歯が本来抜けるべき時期にもかかわらず、グラグラと動揺せずに残っている場合は疑ってみましょう。

 

歯の生え変わりに明らかな左右差がある


反対側と比べて歯の生え変わりが明らかに遅れており半年以上たっても変化がない場合は疑ってみましょう。

 

歯の生え変わりの順番が異なる


歯の生え変わる順番はある程度決まっており、明らかに順番が違う場合は問題がある可能性があります。

 

萌出遅延や埋伏歯による悪い影響

では、歯が生えてこない状態をそのままにしていた場合に起こりうる影響についてご説明します。

 

歯並び全体への影響

乳歯が抜けても永久歯が生えてこない場合、その隙間に向かって隣の歯が倒れこんだり、向かい合う歯が伸びてきて歯並び全体が崩れてしまうことにつながります。

 

埋まっている歯が隣の歯の根を溶かす

位置がおかしな方向を向いている永久歯の場合、隣の歯の根にぶつかって溶かしながら移動する場合があります。

痛みなどが出ることはなく、無症状で進行しますので気付いてからは手遅れという状態になってしまう可能性があります。

 

骨性癒着のリスクが高まる

顎の骨の中に埋まっている状態が続くと、先ほどもご紹介した歯と骨がくっついて動かなくなる「骨性癒着(アンキローシス)」という状態になります。

こうなってしまうと、永久歯を生やすことが難しくなり抜歯の対象になるリスクが高くなります。

 

萌出遅延や埋伏の治療法と治療のタイミング

萌出遅延や埋伏歯やずっと放置してしまうと上記のようなリスクが生じてしまうことがご理解いただけましたでしょうか?

萌出遅延や埋伏歯の状態であるかを早期発見し、矯正専門のクリニックのもとで計画的な治療を受けることが望ましいと言えます。

萌出遅延や埋伏歯の場合、永久歯が生えてこない原因を調べ、その原因を取り除いて生えやすい環境を作ってあげる必要があります。

例えば、永久歯の生える経路に障害物がある場合には、その障害物を取り除いてあげる必要がありますし、方向に異常がある場合には正しい方向へ修正して導いてあげる必要があります。

そのため、原因や処置内容によって「矯正治療」「外科治療」が必要となります。

ではそれぞれの、治療法についてみていきましょう。

矯正治療による治療法

矯正治療では主に歯列を拡大して永久歯が生える隙間をつくったり、引っかかりの原因となる歯の根もとを動かすことで生えてこなかった歯が正しい向きになり自然と生えてくる場合があります。
 

外科治療による治療法

余剰な歯(過剰歯)や嚢胞が永久歯が生えてくることを邪魔している場合は抜歯や摘出が必要になります。

歯茎が分厚いことが原因で歯が生えてこない場合などには、歯茎の切開や開窓を行って永久歯の生えやすい環境を整えます。

特に永久歯の向きが悪く、奥に位置している場合には「矯正治療」と「外科治療」を組み合わせた開窓牽引という処置が必要になります。

また、隣の歯へ悪影響を及ぼす可能性がある場合、埋まっている歯自体の抜歯の選択もあり得ます。

※矯正治療で、前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするもの)は保険診療の対象となります。

 

萌出遅延や埋伏の治療のタイミング

では、萌出遅延や埋伏だった場合いつから治療を始めればいいのでしょうか?

萌出遅延や埋伏歯に関しては対処が遅くなってしまうと抜歯が選択肢になる確率が高くなりますので、判明次第、計画的な治療を受けることが好ましいといえます。

早期に発見することで、これらの治療の選択の幅が広がります。

 

まとめ

歯の生え変わりには個体差あるため、お子さんの歯の生え変わりの状況について判断しづらく、不安に感じている方もいるでしょう。

歯が生えてこない「先天性欠如」、「萌出遅延」、「埋伏」が判明した時点で、何かしらの歯科治療が必要であることがご理解いただけましたでしょうか?

放置することが後々のトラブルにつながるため、早期発見することがとても重要であると言えます。

歯並びでお悩みの方、
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