出っ歯は治せる!コンプレックスも解消できる出っ歯の治療法
日本人に多くみられる出っ歯は、上顎前突症と呼ばれるれっきとした不正咬合の症状です。
テレビでよく目にする出っ歯の人気お笑いタレント、漫画やアニメで面白おかしく描かれる出っ歯のキャラクターによって、周りからコミカルな印象を持たれやすい“出っ歯”。
しかし出っ歯の本人はとてもコンプレックスに感じていて、長い間悩んできたという人も多いものです。
複雑な症状でない限りはとくに治療を行わない人も多く、なかには出っ歯は矯正治療で改善できることを知らない人も少なくありません。
長年放置するとお口のトラブルのリスクも高まってしまうので、積極的に治療を行う方が望ましいと考えられています。
そこで今回は、あまり知られていない『出っ歯(上顎前突症)の矯正治療』について詳しくご紹介したいと思います。
目次
出っ歯(上顎前突症)の症状と原因について
まずは出っ歯の症状や原因について確認してみましょう。
出っ歯ってどんな状態?
出っ歯とは「上顎前突症」という不正咬合の一種で、上の前歯が下の前歯に対し、標準値を超えて前方に離れてしまっている状態の噛み合わせです。
上と下の前歯が大きく離れてしまっていることで見た目だけでなく、機能的なトラブルが生じます。
出っ歯を気にされている方は、以下の症状を訴えることが多くみられます。
1.上唇が盛り上がり、口元や横顔の見た目が気になる
2.カメラに映る時は無意識に下顎を前に出してしまう
3.笑った時につい手で口を覆ってしまう
4.麺類が上下の前歯同士で咬み切れない
5.発音しにくい
6.口が閉じづらい、鼻がつまっている
7.口を閉じると、あごに梅干しのようなシワができる
出っ歯(上顎前突症)の原因は?
「出っ歯」と呼ばれることから歯が前に傾いて生えていると思われがちですが、なかには遺伝的に上顎が前に突出しているケースもあります。
他にも、下顎の成長が十分でなかった場合や幼い頃に指しゃぶりの癖があった、舌で前歯の裏を押してしまうような癖がある、口呼吸の癖があるなども出っ歯を引き起こす原因となります。
このように出っ歯といっても人によって原因は様々です。
もともと上顎が前に出ているという先天的な症状は全体の3割程度で、ほとんどは日常生活のなかで無意識に行う癖や歯並び、噛み合わせなどが関係しているといわれています。
出っ歯(上顎前突症)が引き起こす問題
歯並びや噛み合わせの悪さと同様に、上顎前突症はお口のトラブルや健康面にも大きく影響を及ぼします。
上顎前突症はある日突然起こる症状ではないため、矯正治療を行うべきか長年悩んでいるという人も多いものですが、放置しておくことには何のメリットもなく、むしろ長期にわたって放置することでトラブルが悪化し、結果的に大掛かりな治療が必要になることもあるのです。
上顎前突症によるリスクはどんなものがあるのでしょうか。
前歯を損傷しやすい
上顎前突症の方は転倒などの事故により上顎前歯を打撲しやすい傾向にあります。
出っ歯の度合いが著しい人は、上顎前歯の破折などの外傷を生じる確率が約30%という報告があります。
また、出っ歯の子供は通常のかみ合わせの子供に対し、前歯の損傷のリスクが約2倍高いといわれています。
虫歯や歯周病など口内環境の悪化
出っ歯の人は、前歯や上顎の形から口をうまく閉じることができません。
常に口が開いた状態になるので口の中が乾燥し、唾液の働きが低下して虫歯や歯周病の原因菌を洗い流すことができなくなります。
複雑な症状の場合は歯みがきがしづらくなり、毎日しっかりと歯磨きをしているはずなのに頻繁に虫歯や歯周病になってしまうのも、上顎前突症によるリスクのひとつです。
咀嚼力の低下、胃腸への負担
不正咬合の一種である上顎前突症は、噛み合わせが悪くなるため唾液の分泌が減少したり、食べ物を十分に噛み砕くことが難しくなります。
噛み砕けなかった食べ物がそのまま体内へと運ばれると、胃腸に大きな負担がかかって消化不良を起こしやすくなったりすることも。
胃腸に負担がかかると、栄養が効率よく摂取できなくなったりエネルギーを作り出すことができない、ホルモンの分泌が乱れるなどあらゆる体調不良の原因となってしまうのです。
顎関節症のリスク
上顎前突症のように、前歯が大きく前に出る、あるいは顎の骨自体が前に出ているような噛み合わせの悪さは、顎全体に大きな負担がかかり、顎関節症になりやすいと考えられています。
顎が疲れる、口を大きく開けずらい、顎を動かす時に痛みや違和感を感じるなどは顎関節症の特徴的な症状です。また、顎関節症の原因のひとつに「ストレス」があります。
通常顎関節症の症状は複数の原因が重なって起こるといわれていますが、日常生活の中のストレスはもちろん、無意識に上顎前突症によるストレスを感じて結果的に顎関節症へとつながっていることも考えられます。
うまく発音ができない
不正咬合全般にいえることですが、歯並びが悪く歯と歯の間に隙間が生じると、そこから空気が抜けて言葉をうまく発音できなくなります。
滑舌が悪い、サ行やタ行がうまくいえないなど、相手に聞き取りにくく伝わりにくい話し方になってしまうのです。
幼いころはそれほど気にならないものですが、学生や社会人となって人前で話すときにきちんとした発音ができないことは大きなコンプレックスになることも。
体の歪み
こちらも不正咬合全般にいえることですが、歯並びや噛み合わせが悪いと体全体のバランスが歪んでしまいます。
片側に強く重心をかけることで筋肉が緊張し、血行不良や冷え性、頭痛や肩こりなどの症状がでてくることも。
ひどい場合はめまいや吐き気などが慢性的に起こるなど、決して放っておけないような深刻な症状に発展することも考えられるのです。
ストレス
歯並びが悪いことで体調不良などさまざまな症状が起きることで、無意識にストレスを感じてしまいます。
身体的なストレスはもちろんですが、体にかかるストレスが蓄積され、やがて精神的なストレスに発展することも。
眠れない、イライラするなど典型的なストレスの症状は、実は歯並びや噛み合わせが関係していたというケースもけして珍しくないのです。
歯の黄ばみ
唾液には歯を洗浄する働きがありますが、口が閉じられなかったり歯が唇より前に出ている場合、歯が常に乾いた状態になるため汚れが付着しやすくはが黄ばみやすくなります。
歯が出ていることだけでなく、歯の黄ばみによって清潔感も失われるため、見た目に非常に強いコンプレックスを抱えてしまいます。
風邪などウイルス性の病気になりやすい
ヒトは鼻呼吸をすると、鼻毛や鼻腔粘膜の繊毛の働きによって空気中のほこりや細菌やウイルスが体内へ侵入することを防止します。
しかし、上顎前突症の人は常に口が開いているため口呼吸になり、そこから細菌やウイルスが侵入し、人によっては風邪やインフルエンザなどにかかりやすい場合も。
上顎前突症が直接病気を引き起こすわけではありませんが、ウイルスなどの病気にかかるリスクが鼻呼吸の場合より高まってしまうのです。
出っ歯を改善することは、こうした病気のリスクを減らすことにも繋がると考えられます。
出っ歯(上顎前突症)の矯正治療、始めるタイミングはいつ?治療期間はどのくらい?
子供の場合
子供の歯列矯正では、上顎前突の原因によって治療法や装置が大きく異なります。また、顎の骨の成長をコントロールできることが子供の治療の特徴です。
始めるタイミングは成長により異なるため、小学校低学年で一度、歯列矯正専門のクリニックで相談することをおすすめします。
治療期間は1年~3年程度で、通院頻度は1~2か月に一回です。
■悪い癖による上顎前突
上顎前突の原因が口呼吸や指しゃぶりなどの悪い癖である場合には、これらを取り除く必要があります。
意識付け、口の周りの筋肉トレーニング(MFT:口腔筋機能療法)や装置の装着などで対処します。
鼻疾患がある場合には耳鼻科への受診が必要になる場合があります。
■上顎が出ていることによる上顎前突
上顎が前に出ているために上顎前突となっている場合は、上顎の成長を抑えたり、上顎の大臼歯を後ろに動かすためにヘッドギアを使用する場合があります。
お家にいる時や寝る時に装着し、1日に10時間以上の使用が好ましいとされています。
■下顎の成長が弱いことによる上顎前突
下顎が小さいことで上顎前突となっている場合は、下顎の成長を促すためにバイオネーターやツインブロックを使用する場合があります。
お家にいる時や寝る時に装着し、1日に10時間以上の使用が好ましいとされています。
■歯の傾きによる上顎前突
著しく上の前歯が外側に傾いている場合には内側に倒すことで、上下の前歯の距離を縮めます。
このような場合、ブラケット装置や補助的に拡大装置を使用することがあります。
大人の場合
大人の上顎前突症の治療法には、その症状にあわせて部分矯正、マウスピース矯正、ブラケット矯正などがあります。
大人の場合、とくに矯正治療をはじめるタイミングというのはありませんが、先述のように虫歯や歯周病など様々なリスクを考えると早く治療に取りかかる方が賢明ではないでしょうか。
奥歯のかみ合わせは問題なく、前歯だけが前に出ている上顎前突症は歯全体を矯正する必要がないので、部分矯正を行うことが可能です。
部分矯正で対応できない場合や、出っ歯に加えて歯並びの悪さも関係しているような複雑な状態であれば、通常の歯列矯正と同じくブラケットを用いる治療法もあります。
治療期間は半年~3年程度で、通院頻度は1か月に1回です。
■部分矯正
歯並びが気になる部分だけを矯正する部分矯正は、前歯数本だけが前に出ている状態や軽く重なり合っている状態の矯正に向いています。
部分矯正のメリットは、治療期間が短く、部分的にしか治療を行わないため歯全体の歯列矯正よりも費用は割安になることです。
治療期間も約半年〜1年程度と歯全体の矯正治療よりも短く、前歯だけにしか器具をつけないのでお口の中全体の不快感や違和感もそれほどありません。
一方、通常の歯列矯正と同じく前歯にブラケットをつけるので、どうしても見た目が気になってしまうというデメリットがあります。症状によって部分矯正ができない場合もあるので、歯科医師に相談してみましょう。
■マウスピース型矯正歯科装置による治療
歯の形に合わせた透明または半透明のマウスピースを装着する矯正方法は、極端に複雑な症状でなければ上顎前突症の治療にも有効です。
マウスピースの特徴は、ブラケットに比べて目立ちにくいという点です。すぐに取り外すことができるので、虫歯や歯周病のリスクも少なく矯正治療中も歯を清潔に保つことができます。
マウスピースはブラケット矯正ほど強い力を加えることができないので、軽度の出っ歯や歯の重なりが気になる人にオススメです。
治療期間は部分治療よりも長く約1年〜3年くらいが目安ですが、痛みや違和感が少なくブラケット治療のような不快感もほとんどありません。
■ブラケット矯正
前歯が前に出ているだけでなく、歯と歯が重なり合っていたり捻れているなど不正咬合の症状が複雑な場合は、歯全体の矯正治療に使用するブラケット矯正を使用します。
部分矯正より範囲が広いため費用は上がりますが、マウスピースと比べれば比較的費用が抑えられる場合もあります。
デメリットとしては、部分矯正と同じく見た目の問題や器具を装着した直後の痛みや違和感などが挙げられますが、審美性の高い「エステティックブラケット」や歯の裏側だけに装着する「リンガルブラケット」など様々なブラケットがあるので、歯科医師に相談しながら自分に合った器具を選ぶことができます。
治療期間は約1年〜3年です。
■抜歯や外科手術
出っ歯で前歯を内側に入れる場合、抜歯が必要になることがあります。
また、著しい上顎前突で歯を動かす矯正治療のみでは難しいと予想される場合は、外科的な手術を伴う矯正治療が必要となります。
出っ歯(上顎前突症)の治療費、どのくらい?歯列矯正にかかる費用の内訳
症状の度合いや治療方法によって、治療にかかる費用は大きく変わります。
しかし、上顎前突症の治療だからといって通常の歯列矯正と大きく変わることはありません。
矯正治療は、基本的には保険適用外となります。先天的な病気などが原因で治療が必要と認められた症状のみ保険適用となります。
それでは、治療の段階別にかかる費用を詳しくご紹介します。
治療前にかかる費用:0〜6万円程度
治療を行う前に、まずはカウンセリングを行います。
その際、現在の歯の状態を確認するための診察などが必要になり、その後具体的な治療内容を決めるためにレントゲン撮影やCT、骨格や噛み合わせの検査を行います。
初回のカウンセリング費用が無料のクリニックもあるので、「まずは相談だけしてみたい……」と考えている人にとっては安心です。
しかし、初期費用が安価なぶん、治療費が高額になる場合もあるので、治療に進む前に費用面をしっかりと確認しましょう。
治療中の費用や矯正器具の費用:15万円〜120万円程度
どんな治療を行うか、どの器具を使用するかによって費用が大きく異なります。
矯正器具を装着したあとは、経過観察や歯の移動に合わせて調整を行うなどの定期検診が必要です。
目安は1ヶ月に1回、費用は一回につき3000円〜1万円程度ですが、こちらも症状や治療方法によって異なります。
クリニックによって、これらの検診費用が治療費に含まれている場合もありますが、その都度費用がかかる場合もあります。
「治療費だけで済むと思っていたのに、診察のたびに毎回お金がかかった!」とあとで驚くことにならないよう、こちらもしっかりと確認を取っておきたい部分です。
治療後にかかる費用:1万円〜10万円
矯正器具を外してからも、歯が元も位置に戻っていないか、噛み合わせや健康上の問題、日常生活の不具合がないかなど定期的なチェックが必要です。
治療後にかかる費用は、数千円〜数万円とクリニックによってさまざま。歯の状態によっては、歯が戻らないよう固定するためのリテーナーという器具を使用する場合もあります。
治療中はもちろんですが、歯が戻らないようにするアフーケアもとても重要です。この部分も治療費に含まれているか否かを確認しておきましょう。
歯列矯正は医療費控除の対象!治療費の一部が税金から控除されます
保険適用外の歯列矯正ですが、確定申告の際に医療費を申告すれば税金から控除さるされる医療費控除の対象となる場合があります。
高額になりがちな歯列矯正も、このような制度を上手に活用すれば、治療費の負担を軽減することができます。
医療費控除とは……
その年の1月1日から12月31日までの間に、配偶者や子供などの同一家族(生計を一にする親族)の医療費が10万円を超えた場合に、一定の金額の所得控除を受けることができる国の制度です。(所得によって上限に変動あり)
治療にかかった明細を確定申告時に提出することで、医療控除が適用されます。
<医療費控除の対象となるもの>
■診療や治療にかかった費用
■治療に必要な薬代
■クリニックに行くための交通費(ただし、バスや電車などの公共交通機関。タクシー代は通院できないほどの病気や怪我の場合のみ)
診察や治療で受け取った領収書は大切に保管しておきましょう。
まとめ
出っ歯は日本人に多くなじみ深いことから、異常な噛み合わせであるという認識がまだまだ浸透していません。
しかし、放っておくことによりお口や体の健康面に影響が出ることは明らかですので一度、矯正専門のクリニックでカウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。
Check Point
■出っ歯の原因は顎の成長の問題や日常生活の舌の癖や口呼吸などによって引き起こされる。
■出っ歯は見た目の問題だけでなく、口が閉じずらいことで口呼吸になりやすい。
■子供の出っ歯は小学校の低学年に一度、歯列矯正専門のクリニックで矯正相談するとよい。
■大人の出っ歯は上顎と下顎のズレが大きいほど抜歯の可能性が高くなり、歯列矯正のみでの治療が難しい場合は外科手術を併用した矯正治療が必要となる。
■出っ歯の治療期間は子供も大人も2~3年程度、通院頻度は1~2か月に一回
■費用の相場は子供の矯正で10~60万円、大人の矯正で60~150万円
■通常の矯正治療は保険適応外だが、医療費控除が適用される場合がある。